弓矢は範囲に攻撃することができない。これはそれだけで魔法に対して弓が劣る点になってしまう要素でした。ただ打撃を与えるだけなら剣や槍のほうが与えられる力が強く、遠くから撃つ分には、マナを消費しないにしても魔法のほうが上。さらに大きな武器や魔法であれば複数に影響を及ぼすこともできる。安全に遠距離から攻撃可能であるため、兵が扱うにはよくとも強者が扱うには見劣りする武器と見るものも中には居ます。
　弓矢がこれらに追いすがるには、特別な矢を用いる必要がありました。しかし、経済的理由からあまり現実的な手法ではありません。
　この現状を変えようと新たな手法を考えたのが、フォートランと呼ばれる魔動機技術を継いできた家の娘でした。彼女は現代では失伝しかけている魔動機技術を応用し、弓に特殊な動作を行う絡繰を装着しました。無数の矢を一度につがえ、同時に放つ。あるいは、複数本を弓にセットして弦を引く度に次の矢をつがえることを可能にしたこの仕掛は、大量の矢を用いることで一気に広範を射抜くことを可能にしました。
　しかし無理に矢をまとめて放つ事は当然まともに狙いなど取れないということであり、誤射を起こさないようにすることもままなりません。結局この技術は、一部の優れた射手が格下を掃除する時にしか使えない美しくない技、という印象ばかり残ることになってしまいます。
　開発者の極度の「行方不明体質」もあってこの流派が他者の目に入ることは少なく、傍目に映る派手さも相まって「知る人ぞ知る曲芸」のように扱われています。

流派装備